防火設備定期検査

建物を安全が保たれているか、建築基準法に照らしあわせて、定期的に調査・報告する「定期報告制度」に、防火設備が新たな検査の対象設備として加わりました。

2016年6月1日施行の改正建築基準法に定められたもので、制度導入の背景には、2013年の長崎市グループホームの火災(死者5名、負傷者7名)、福岡市診療所の火災(死者10人、負傷者5人)などの悲惨な事故があります。いずれも、防火設備の不適合が認められています。こうした設備が、特定行政区で検査・報告の対象と定められていなかったため、その不備を発見することができず、結果として被害が拡大した可能性も指摘されています。こうしたことから、特に安全性を確保する必要性が高い建築物については防火設備の検査と報告を全国的に義務付けるとともに、検査の基準や検査する人に資格制度も導入されました。

防火設備定期検査が必要な建物

多くの人が利用する以下のような建築物が対象になります。

建築物の対象用途 対象用途の位置と規模
劇場、映画館、演芸場 ・3階以上の階にあるもの

・客席の床面積が200m2以上のもの

・主階が1階にないもの ・地階にあるもの
観覧場(屋外を除く)、公会堂、集会場
病院、有床診療所、旅館、ホテル、週信用福祉施設(別表) ・3階以上の階にあるもの

・2階の床面積が300m2以上のもの

・地階にあるもの
体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、 水泳場、スポーツの練習場(いずれも学校に附属するものを除く) ・3階以上の階にあるもの

・床面積が2000m2以上のもの
百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、 バー、 ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店を含む店舗 ・3階以上の階にあるもの

・2階の床面積が500m2以上のもの

・床面積が3000m2以上のもの

・地階にあるもの

※位置と規模は、いずれかに該当するもの

【定期報告の対象となる就寝用福祉施設】

就寝用福祉施設
 サービス付き高齢者向け住宅

※「共同住宅」「寄宿舎」「有料老人ホーム」い ずれかに該当
 認知証高齢者グループホーム、障害者グループホーム ※「寄宿舎」に該当
 助産施設、乳児院、障害児入所施設
 助産所
 盲導犬訓練施設
 救護施設、更生施設
 老人短期入所施設
 小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護の事業所

※「老人短期入所施設」に該当
 老人デイサービスセンター(宿泊サービスを提供するものに限る)

※「老人短期入所施設に類するもの」に該当
 養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム
防火設備定期検査の対象となる設備と検査内容

防火設備は、火災の際に避難の安全確保や、延焼拡大の防止、防火区画を形成に役立つ設備です。これまでは、建築設備の一部として、目視点検などの簡易な検査でしたが、設備の仕様も複雑化していることから、設置状況や動作確認など、詳細な検査が必要となります。

【対象となる設備

【検査内容】

(1)設置状況

閉鎖の障害となる物品の放置の状況

(2)連動制御

感知器や連動制御器の状況等、自動閉鎖装置や手動閉鎖装置の状況等、

予備電源による作動状況の確認

(3)安全装置

危害防止用連動中継器の電源の状況、運動エネルギーの確認等

(4)駆動装置

開閉機、ローラチェーン等の状況

(5)本体と枠

スラット、座板の変形がないか等の確認

(6)総合的な作動の 状況

感知器と連動した防火シャッターの閉鎖状況 の確認

防火設備定期検査を実施できる人

防火設備定期検査を行うために、新たな資格「防火設備定期検査員」が設置されました。防火設備の点検は、これまで建築物調査の一部として実施されてきましたが、連動機構による随時閉鎖方式の防火設備など複雑な仕様の設備が増えてきています。そのため専門的な知識に基づく高度な検査が必要であるとされ、「防火設備定期検査員」が実施することとなりました。

[ 必要な資格 ]

  • 1・2級建築士
  • 防火設備検査員

【検査を行わないと…】

建築基準法第12条に定められており、報告を怠ることは法令違反となります。

その場合、建築基準法101条により、100万円以下の罰金が課せられることがあります。