NBSの連載小説 第一弾

Episode 9 キンキュウシャダンベン?(8月某日)

説明会と並行して、緊急遮断弁の工事と点検が行われていた。引き継ぎの時にチンプンカンプンだった「キンキュウシャダンベン」は、消防用の設備というよりは、震災用の設備だ。地震が起きた時、僕が住んでいるような古いマンションでは、水道管が破損する恐れがある。破損すると、大量の水が無駄になってしまうばかりか、住宅に浸水するなどの被害も起きかねない。また、水道管が破損しなくても、受水槽に溜まった水を、早い物勝ちで使ってしまう可能性もある。それを防ぐのが、地震を感じ取って、水の汲み上げと供給をストップする緊急遮断弁ということらしい。
3年前から少しずつ工事がすすめられ、今年は、最後に残った2棟の工事。これで、全ての棟に遮断弁がつけられ、震災時に受水槽に溜められた水を、住民が分け合って使えば、数日は給水車なしでもしのぐことができることになった。

僕が怖い物と言えば「地震、雷、火事、奥さん」だったが、防災担当理事になって、色々な設備を知り、自分の住んでいるマンションへの安心感が日に日に増してくるのを実感する。「備えあれば憂いなし」なにも恐れることはないのだ(奥さんを除いて)。


 住民説明会が終わると、今度は来月の防災訓練の準備で、自治会と調整することが多くなった。男ばかりの管理組合理事会とは違い、自治会はほとんどが女性。会合はいつも集会場の和室で、実に和気あいあいと行われている。
 まず、机の上からして違う。手作りの漬け物やら、いただきものの果物やら、ご当地物のお菓子やら、土産のまんじゅうやらが、所狭しと並べられ、書類はみんな膝の上。実にかしましく、きゃぁきゃぁとおしゃべりしているうちに、いつの間にか、役割や段取りがきまっていく。恐るべし女性パワー。
僕は、女性たちのおしゃべりで、ぼぅっとなった頭で、漬け物やらお菓子やらまんじゅうやらを、与えられるがままに詰め込んでいればよかった。

「男より女の方が人生の楽しみ方を知っている」と何かで読んだことがある。彼女たちを見ていると本当にその通りだと思う。

■このコンテンツは、NBS取引先の管理組合、自治会の理事・役員の方のアドバイスを受けて制作しています。物語はフィク
  ションであり、より内容の濃い情報を提供するため、理事の活動をデフォルメしています。ご了承ください。