NBSの連載小説 第一弾

Epilogue 理事でなくなった僕

僕の住む団地に、今年も桜の季節が巡って来た。3月の棟別集会では、僕の後任がなんと立候補で決まった。僕が広報誌に描いた消防設備会社(女性)のイラストにつられたのだと笑って言っていたが、実はその昔、消防士を志望していた人で「防災」という活動で、今も残る情熱を消化することができればと、やや照れながら居酒屋で話してくれた。僕が1年やってきた理事の役目を理解してくれていることに感激し、僕はなんの心配もなく理事の座を離れることができた。「防災の要は住民の結束。これにつきる」とだけ、アドバイスを残して…。
桜が満開になった日曜日の朝、僕は「ぼくしゃん」「ぼくしゃん」と呪文のように唱える赤ちゃんを連れて、1年前、集会場の窓から見た桜の下にきていた。実に平和な気持ちだった。桜の花びらが、春風にひらひらと舞い、今日は絶好の花見日和になるだろう。赤ちゃんの髪についた花びらを取ろうとしたとき、集会所の窓をあけて、誰かが僕を呼んだ。いや誰かではなく、誰か「たち」が声を揃えて僕を呼んでいる。

「早く早く!テントをたててしまわないと!みんな集まっちゃいますよ!」

「ほらほら、このエプロンをつけてください」

「10:00にメガホンで呼びかけるんですよ!」


「がんばってくださいね! 自治会長!」
理事をやめ自治会長になることになった僕が企画した初仕事。
第一回 親睦花見大会がこうしてはじまった。
(完)


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NBSの連載小説 僕シリーズについて

■このコンテンツは、NBS取引先の管理組合、自治会の理事・役員の方のアドバイスを受けて制作しています。物語はフィク
  ションであり、より内容の濃い情報を提供するため、理事の活動をデフォルメしています。ご了承ください。