NBSの連載小説 第一弾
Episode 13 二度目の消防設備点検(11月某日)
11月になり、二度目の消防設備点検の日がやってきた。前回同様、消防設備会社の人の手によって配布された「消防設備点検のお知らせ」のチラシをポストに発見したとき、「もう半年か…」と、当時、理事になりたてで右も左もわからなかった自分を懐かしく思い出した。あっという間だったようでもあり、ずいぶんと時間がたったようでもあり、不思議な感覚になるのは、それだけ中身が詰まった半年間だったからかもしれない。
あのときの僕と今の僕の違いを考えると、すごく早かったような気がするし、ひとつひとつの理事としての仕事を思い出すと、長い道のりを超えてきた達成感のようなものを感じるのだ。
今回の点検でも僕は、可能なところは消防設備士たちについてまわった。専門的な仕事には、特殊な道具がつきものだが、消防設備点検には、あぶり棒(棒の先にお椀のようなものがついているもの)などの他は、ドライバー、ニッパー、ペンチなど、ごく普通の道具の方が多く、たいていのそうした道具は、それぞれの腰のベルトにつけられている。その中で、ひときわ異質な物があることに僕は気がついた。それは「ぞうきん」。
彼らは、点検後そのぞうきんで、送水管や避難通路表示、誘導灯の中までも、一生懸命拭いていく。誘導灯は、普段意識して見る事はほとんどないが、点検する様子を見ていると、蛍光灯の熱で焼けたりして、結構くたびれている感じだ。それでも「きれいに拭うことで、万が一の時少しでも目立つように」と、ひとつひとつ誘導灯をきれいにしているのだという。消防設備は「万が一の時」に使うもの、その時の状況を考えながら点検するということに、プロとしての姿勢を感じた。
今回の消防設備点検では、充電回路が壊れて取り替えが必要な誘導灯が2つ見つかり、その他に非常用バッテリー切れが3こあった。誘導灯は火事や地震で停電になっても、点灯し続けるために、非常用のバッテリーが設置されている。点検時には、紐を引いて人為的に配線からの電力供給をストップする。その時、非常用バッテリーに切り替わらず消えてしまうのが、「バッテリー不良」ということになるらしい。この場合は、バッテリーを取り替えればことは済むのだが、充電回路の故障となると、もはや本体ごと取り替えるしかないとのこと。
最近では、誘導灯も改良され蛍光灯が入っている大きな従来型のものから、コンパクトで省エネルギーの「高輝度」タイプが主流になっている。高輝度タイプ変えると、電気代は70%カットできるほか、ランプの寿命も10倍になるそうだ。そういえば会社のオフィスビルについている誘導灯は、小さくて薄くて、うちのマンションよりカッコいい。
今回故障がわかった2基はすぐに入れ替えるとして、電気代が1/3にもなるのなら、来年の大規模改修時に全て新しいものにリニューアルした方が、ランニングコストの削減にもなるのではないか。僕は検討課題として、誘導灯の入れ替えを管理組合に上げてみることにした。全部、高輝度に変えた場合の工事費、設備代金を、浮いた電気代で払うとして、何年でペイできるかの書類を設備会社がつくってくれることになった。
■このコンテンツは、NBS取引先の管理組合、自治会の理事・役員の方のアドバイスを受けて制作しています。物語はフィク
ションであり、より内容の濃い情報を提供するため、理事の活動をデフォルメしています。ご了承ください。