NBSの連載小説 第一弾

Episode 14リフォームでミケーカイ(11月某日)

僕らが誘導灯の話をしていたとき、前回同様、点検の責任者から電話がかかってきた。
「僕さんですか、●号棟◯×□室にきていただけますか」。
ほ~ら。またきっと、不測の難問が発覚したに違いない。●号棟◯×□室、●号棟◯×□室…まてよ!●号棟◯×□室と言えば、広報担当理事の部屋じゃないか?
 広報担当理事は、万年理事職を引き受けている奇特な人だが、僕が新人であるからなのか、僕をからかうことを、生きがいにしているとしか思えないところがある。みんなの前でさんざん繰り返しネタにされた消火器事件漫画研究会出身の話題で、僕に「慌て者」&「おたく」というレッテルを貼ったのはこの人だ。

 部屋にいってみると、いつものキャラとは打って変わり、しゅんとした面持ちの広報理事が僕を迎えた。
聞けば、この家は、夏にリフォームを行い、リビングの一部を仕切って個室を作ったのだが、それによって、火災報知器のない「未警戒」の部屋ができてしまったとのこと。リフォームの際には管理組合に工事内容の届出を提出し、副理事長が、内容を確認した上で、工事を許可することになっている。しかし届出には、壁紙の張り替えと、フローリングへの変更としかなかったため、未警戒の部屋が出ることはチェックできなかったのだろう。消防設備会社の人も「内装屋さんに消防法の知識がないので、よくあるんですよ」と言っていた。

  広報担当理事は「いやぁ~リフォーム工事がはじまった後に、どうしても部屋が欲しくなったもんで。報知器をつけなきゃいけないなんてしらなかったし」と頭を掻いている。自費で火災報知機をつけてもらうことになったのだが、彼がどうしても欲しかったというその部屋とは…。な、なんと彼のコレクションルーム兼寝室!そのコレクションとは、に…に、人形?!
壁に据え付けられたコレクションケースに並ぶのは、女の子たちが遊ぶリカちゃん人形より、ちょっと大人っぽくてより精巧な人形が、ずらりと並んでいた。「カスタムドールっているんだよ。色んな作家がいて、ネットでは、洋服専門店まであるんだぜ。このこたちに囲まれて寝るのが夢だったんだよね~。みんなにはないしょにしといてね♪」。
(…広報理事ぃぃ…あなた本物のオタじゃないですかっ!)結局僕は、このネタを奥さん以外には誰にも言えなかった
。なぜって、あまりに筋金入り…。

■このコンテンツは、NBS取引先の管理組合、自治会の理事・役員の方のアドバイスを受けて制作しています。物語はフィク
  ションであり、より内容の濃い情報を提供するため、理事の活動をデフォルメしています。ご了承ください。