NBSの連載小説 第三弾    僕シリーズについて

Episode 4  パンのみに生きるにあらず

 就職活動がうまく行かないことに焦りつつも、久しぶりにできた嫁との時間に、僕は幸せを感じていた。
 子どもが授かったのを機に入籍したが、共働きで忙しく「新婚」らしい生活もなく半年が過ぎようとしていた。産休に入った嫁と会社をやめた僕。こんなに長い時間をいっしょに過ごすのは、はじめてかもしれない。
 そうだ、この人は、最初からよく笑う人だったんだ。少し春めいた街をいっしょに散歩しながら、僕の小さなボケにケラケラと笑う横顔を見て、この笑顔を一生守って行こうと、心の中で誓った時そのだった。
 急にお腹を抱えて苦しみ出した嫁が、信じられないことを言った。
 「う、生まれそうかも…」

 それからの展開は、もう幸運の連続としか言いようがない。
 タクシーを呼ぼうと焦って、スマホでタクシー会社を検索しているところに、一人の年配の女性が通りかかった。彼女は保健婦で、嫁の陣痛の間隔を確認すると、僕に救急車を呼ぶように言った。僕が状況をつかめず口をパクパクさせているのを2秒待って、自分の2つ折りの電話を出し1・1・9とボタンを押した。
 保健婦さんは、嫁に予定日や通院先の病院名を聞きながら、電話の相手に的確に説明している。救急車を待つ間に病院にも連絡しておいてくれたため、嫁はスピーディーに受け入れられ、あっという間に元気な男の子を出産した。
 通りかかった保健婦さん、救急救命士、看護師さん、担当医…たくさんの専門職の人に助けられ自分は父親になることができたのだ。この経験が、僕の職業感を大きく変えた。
 「人はパンのみに生きるにあらず」。
 暮らすための仕事を探すのではなく、社会に役立ちそして息子に語ることができる仕事をみつけようと。

 「社会に役立つ仕事」とはなにか。いろいろな切り口で定義ができそうだが、僕はそれを「国家資格」を有する人がする仕事と決めた。国が資格を定めるということは、正しい知識や技術が必要であり、かつ社会に役立つ仕事ということになる。そんな視点で求人誌を見ると、国家資格が必要な仕事はたくさんあった。しかし、そのほとんどが「経験者募集」、その中で「未経験歓迎」を大きく打ち出していたNBSエンジニアリング株式会社に応募してみることにした。
 WEBサイトから応募書類が送れるため、サイトにアクセスしてみると、未経験からの現場職を目指す人のための特設ページ(「確かな仕事」)まで掲載されていて、強い「歓迎」の気持ちが伝わってきた。


■このコンテンツは、特定のスタッフを描いたものではなく、全員の経験をもとに書き起こしたフィクションです。NBSの社風に関しては、かなり忠実に描いています。