NBSの連載小説 第一弾

Episode 17 連結送水管耐圧性能点検(2月某日)

2月に入り、僕に託された今年度の仕事は、「連結送水管耐圧性能点検」のみとなった。レンケツソウスイカンタイアツセイノウテンケン(ちなみに22文字)。舌を噛みそうな名前だが、これは、消防法の改正で義務づけられた点検。連結送水管のある築10年以上の建物(「地上7階建て以上の建物」、「地上5階建て又は6階建てで、延べ面積6000m2以上の建物」、「延べ面積1000m2以上の地下街」「道路部分がある防火対象物」)は、すべてこの点検を行い、初回点検後は3年おきに実施しなければならない……と、消防設備会社の人に聞いた。僕のマンションでは、今回が3年ぶり2回目の点検になる。連結送水管とは、建物の上階に消火用の水を送るための管のことで、上階の屋内消火栓BOXにつながっている。恥ずかしい話だが、僕はこの点検まで<連結送水管BOXの中の大きな蛇口は、水道の蛇口の大型のもので、水道管につながっているのだと思っていた。考えてみれば、消火には一度に大量の水が必要な訳であり、しかも、震災時の火災などでは断水なんてこともあり得る訳で、消火用の水は常に防火用水槽に蓄えられているのだ。路地に桶を積んだりして、防火用の水を蓄えていた江戸の時代から、ずっと引き継がれている防火対策ということになるのだろう。
火災時には、ポンプ車が、防火用水槽から水をくみ上げ、送水口から建物に水を送る。消防士さんは、「ムーブ!ムーブ!」と(言わないと思うけれど)、颯爽と階段をかけあがり、火元に近い連結送水管BOXをバーンとあけて、ホースの口を連結送水管に接続、ホースをのばして、勇猛果敢にダッシュで火元に近づく。そして、狙いを定め体勢を整え、「放水開始!」「放水開始(復唱)」の合図で、バルブが開かれ、水が噴射される…僕の演出がだいぶ入っているが、連結送水管は、消火活動の動脈のような重要な役割をもっているということがわかってもらえるだろう。「放水開始!」「放水開始(復唱)」で、ホースが「…。」なんてことになったら、シリアスドラマが一気にコメディ。人の安全がかかっている現場には、笑いは必要ないのだ。それだけではない。途中で送水管が破損していたりすると、そこから大量の水が一気に溢れ出す。消火活動が遅れる上に、水の被害とは、踏んだり蹴ったり。そうしたことにならないように、送水管の性能を調べるのが、「連結送水管耐圧性能点検」という訳だ。

さて、点検では、通常いきなり水を送ってみることはしないらしい。もしも管の破損があると、点検で水の被害が出てしまう危険があるため、送水口から空気を送り、圧力計で空気のもれがないか調べる。圧力が抜けるということは、空気の抜け穴があるということで、どこに破損があるか調べるのだが、
僕のマンションのような埋め立て地では、地盤の沈下などにより、管が地中で破損していたりするケースが出て来ているらしい。破損が確認されると、たいていの場合は、新たに送水管ルートを作らなければならないため、大規模な改修が必要になると聞き、ヒヤヒヤして立ち会ったが、結果異常なし。これで、無事僕の理事の仕事が終了した。

■このコンテンツは、NBS取引先の管理組合、自治会の理事・役員の方のアドバイスを受けて制作しています。物語はフィク
  ションであり、より内容の濃い情報を提供するため、理事の活動をデフォルメしています。ご了承ください。